魚突きの記事をあげている理由の一つに、「仲間を増やしたい」という想いがあります。
一方で、気軽に誘えない理由もあります。
それは、魚突きが死亡率のとても高い遊びだからです。
このホームページを見て、魚突きをやってみたいと思う人も一度この記事を読んでいただき、このような危険が潜んでいるという事を知っておいてください。
死にかけた事例6選
船にひかれそうになる
魚突き用のウエットスーツは岩やクラゲから肌を守る為に、基本フードがついています。
しかし、これが付いているせいで周りの音は聞こえにくくなります。
夏は3mm冬は5mmのウエットスーツを着るので、冬はより聞こえにくくなります。
潜っている最中、ターゲットに集中している為、より外部の音が聞こえにくくなります。
一方、船の音は、海底の地形によって自分の耳に早めに届くこともあれば、届きにくくなることもあるようです。
また、高速で移動している船なんかは、潜り初めでは遠くにいても、1分間潜っているだけで真上にいるなんて言うことも平気であります。
小さい船のスクリューでも頭を巻き込まれたら死んでしまうのではないでしょうか。
私がひかれそうになったのは、小さな漁船。
仲間と二人で潜っていました。漁師はウエットスーツを着て潜っている人間がいれば、密漁チェックの為声をかけに来たりします。
私が潜っている間、友人を見つけた漁師は、友人の側まで船を移動してきました。
私はそれに気づかず、浮上を開始。酸素の残量も限られているので、スピードを出して浮上します。
視界にスクリューの泡が見えるまで音を感じませんでした。
そんなことがあるんです。
スピードが出ていることもあり、水の中では急に止まることはできません。
たまたま、スクリューに巻き込まれずに済みましたが、頭が巻き込まれていたら死んでいたかもしれません。
水中拘束
魚突きを安全に行う為には、十分な装備が必要です。
ウエイトや、ナイフ、ナイフをしまうサヤ、フロート、フロートライン、ヤスなどなど。
こういうものはすべて体と接触しているか、ほかのパーツを介して繋がっています。
一方ゴーグルをして潜っている為、視界は普段よりずっと狭くなります。
何かが引っかかっていても目視して簡単に確認できないこともあります。
私が水中拘束にあったのは、甑島で、スジアラを突いた時です。
突いてすぐに、スジアラは水深6mほどの海底の大きな岩下に隠れました。
ヤスはスジアラに刺さり、返しが付いてるため、魚を回収してからでなくては、取り外すことができません。
隠れた穴はかなり深く奥行があり、上半身を突っ込んでやっとスジアラに触れることができる。
といった状態です。
息を止めて、降下、6m下まで泳ぎ、穴に入る。この流れだけで、結構な酸素を消費します。
実際に回収作業をできるのは僅かな時間。
複雑な穴の構造に回収に手こずっていました。
もちろん一回では回収できず、5回目くらいのトライした時です。
いい加減回収作業に焦りを感じていたので、無理して回収作業を残り酸素ギリギリになるまで頑張ってしまいました。
限界を迎え、ヤバいと思い急いで浮上開始。
するとヤスとつながっていたフロートラインが足に絡まっていたことに気が付きました。
フロートラインとは、ヤス⇔フロートライン⇔フロート(海面に浮かせる風船)といった接続でヤスとフロートを繋ぐアイテムです。大きな魚を突いた場合、ヤスを持って行かれない為の仕掛けです。
ギリギリまで海底にいたこともあり、パニック状態に陥り、足をバタバタさせて振り解こうと試みます。冷静であれば、複雑な絡みでもないため、安全に解くことはできたと思います。
力ずくで浮上したところ、フロートラインが切れ、海面に戻ってくることが出来ました。
フロートラインにはゴムやナイロンの線などいろいろな材料がありますが、幸い私が使っていたのは細めのゴムだった為、切れたのです。
大物を狙う人は、フロートラインを頑丈なものにしますが、そうしていなかった事で救われました。
パニックになることが一番危ないと感じた一件でした。
EXIT困難
いわきでは少ないですが、岩場しかないポイントはENTRYもEXITも気を付けなくてはいけません。
ENTRY=海に入ること EXIT=海から陸に上がること。
私が陸に戻れなくなったのは伊豆大島で突きをしていた時です。
切り立った岩場と荒い海で有名なポイントに潜っていました。(伊豆大島のトウシキというポイント)
やはり、潮通しがよかったりと危ない海は魚影も濃いということがいえます。
その日は割と波もウネリも少なかったため、ここで潜ることに。
ここのポイントは陸に小さため池のような窪みがあり、そこから細い溝を通って海に出ます。
他の箇所からは岩場が切り立っている為、基本的にENTRYもEXITもできません。
2時間程度は泳いでいたと思います。そろそろ戻ろうと思った時には陸地付近では物凄いうねりになっていました。
うねりの高さは自分の身長×4倍くらいでしょうか。岩場に波もあたり、白波立っています。
白波は海中での視界を0にします。
この様な荒れてしまった海からはEXITポイントである小さな溝を見つけることはできませんでした。
このまま海にいても、うねりが静まる保証はありません。より強くなる可能性もあります。
焦りから、どうしても直ぐに陸に戻らなくてわ。という考えになり、上りやすそうな崖を見つけて泳いでいきます。
うねりが下がった時に岩に打ち付けられる恐怖があります。
白波立っているので、海面から岩肌が見えず、下げのタイミングで突然現れます。
うねりが上がるタイミングで岩肌まで全力で泳ぎ、最高点で岩にしがみつきました。
しがみつけても、次のうねりが、前回の最高点より高く、岩肌から引き剝がされます。
その場にとどまっては、下げで岩肌に打ち付けられては大変なので、急いで沖に泳ぎます。
これを何度か繰り返し、ゴーグルが割れそうなくらい顔面を岩にぶつけました。
最後には岩肌にしがみつき、ウェットスーツに穴が開くことも気にせず、全力で岩を駆け上りました。
ヘトヘトになって、やっと陸に戻ることができたのです。
この一件はどうしたら防げたのかはわかりませんが、それ以来、少しでも荒い海は潜らない様にしています。
潮に流される
潮の流れについては注意すべきとはいわれていますが、魚突きをしながら潮を読むのはとても難しく、初めてのポイントでは特に難しく、事前に有識者から情報を得ておく必要があります。
また、突如潮の流れにのってしまった時の為に、しっかりした装備で魚突きをする必要があります。
ドン・キホーテなどで売っている短いフィンでは、早い流れにのってしまった場合、流れから脱することは難しいでしょう。
私は、1mほどの長さがあるロングフィンを使っています。
ここは、潮通しが良いで有名なポイントで、回遊魚が回ってきます。(上記と同じトウシキ)私が流されかけた事は何度かありますが、一番危なかったのは、伊豆大島で潜っていた時です。
普段より沖まで泳いでみようと試みました。
ある一線お越えたところで、突然沖に向かって流れる強い流れにのってしまい、海底の地形の変化が速いことから気づきました。
急いで方向転換し、陸のほうへ引き返そうとしますが、全力で漕いでも少しずつしか進みません。
サーフでなく岩場だったので、おそらく、離岸流とは別で、潮の流れだと思っています。
僅かにしか進まない中、10m程度必死に泳いでやっと流れから逃れることが出来ました。
もし、「フィンにトラブルがあったら。」「体力が途中で切れていたら。」「方向転換がもう少し遅れていたら。」考えるだけで吐き気がします。
伊豆大島では、何人も潮に流されて死亡者が出ています。
事前情報はしっかり集めてから潜るようにしましょう。
白波にのまれる
前項でも記載しましたが、白波にのまれると何もできません。
沖でうねりにあうのは何も問題がないのですが、中途半端に浅い磯場ではうねりが白波に代わります。
なので、基本は沖から、陸に近づくところで白波が発生します。
私が本気でヤバいと思ったことは2回あり、どちらもいわき市の海で、江名と、三崎公園です。
いったん沖まで出て、帰る途中白波の近くを泳いでいました。外側からは、どこで白波が立っているか見えるので、その時は際を泳いでいました。
ここまでなら大丈夫だろうと考えながら、際と平行に泳いでいたつもりでしたが、方向がズレていたのか、うねりが思ったよりも手前で白波に変ったのか、20mくらい続く白波にのまれてしまいました。
視界は0になり、波の力は容赦なく、全身関節があり得ない方向に曲がります。マスクは剥がされかけ、上下が分からなくなり、岩にぶつかったりもします。
マジで恐い。
白波から抜けるまで、流れに体を任せるしかありません。
波と波の間で呼吸はできますが、直ぐに次に来る白波にのまれ、の繰り返し。
波が無くなる浅瀬まで流されたところで、やっと解放されます。
腰のメグシにつけていた魚はすべて千切れ、ロストしています。
持っていたカーボン製のヤスが折れていたこともあります。
この件がこれまでの死にかけた事例の中で一番恐かったです。
絶対に白波には近づかないと心がけています。
フィン無しウェイト有で溺れかけ
その日、潜りを終えて港をウロウロしていました。
どんな魚が釣れるのか子供連れの釣り人にインタビューしていたところ、話が脱線し「昨日港内にお父さんがシマノの釣り竿を落とした」と子供が話してくれました。
私はさっきまで潜っていたので、ウエットスーツを着ている状態で、フィンやウェイトも片づけていなかったため、「潜って獲ってきますよ!!」といいました。
その釣り人はとても喜んでおり、私もアドレナリン,ドーパミンがでていました。
入水後フィンを落としてもらうつもりで仲間に預けて、ウエイトを付けた状態で、2m以上距離のある水面へ飛び下りました。
想像以上に衝撃が強くマスクに一気に水が入ってきて、少し焦った状態になり、体は水面から1m以上沈んでいたと思います。
視界が0のまま、水面に浮上しようと漕ぎましたがフィンを付けていない事と、ウェイトを付けていたことで、なかなか浮上できません。
この時点でかなりパニックになっています。
気持ちを落ち着かせ、やっと浮上することが出来ましたが、心臓がバクバクして、しばらくは潜水出来るような状態ではありませんでした。
それほど酸素を消費していたのです。
この時はたまたま、ウェイトを軽くしていたので上がってくることが出来ましたが、時には、フィンで漕ぎ続けなくては浮いていられないような重量を付けている時があります。
この様な状況で、フィンをつけずに飛び込んでいたら、確実に上がってくることはできません。
また、ゴーグルに水が入っていると冷静ではいられない為、落ち着いてウェイトをリリース出来る自身が私にはありません。
反省をすると、『人助けをする』という事からいいところを見せようとテンションが上がり、『装備の状態によりどのような事態になるのかを冷静に考えることが出来ていなかった』事が原因だと考えます。
海に入る前は、冷静に装備の確認をし状況を把握することが重要だと再認識しました。
伝えたいこと
魚突きは死亡率が極めて高い遊びです。
直接の仲間は死んではいませんが、仲間の仲間という範囲では2人亡くなっており、YoutuberのDaitubeさんも潜り中の事故で亡くなっています。
Daitubeさんは私と同じくもう一つの趣味でブレイクダンスをやっており、とても親近感を持っていました。
1ダイブの死亡率が1パーセント未満だとしても、その事象が発生してしまったら、全てが終わります。
ゲームとは違い、やり直しはできず、反省もできません。
私の経験から、予想される危険については、伝えましたが、想定していないトラブルというのは必ず発生します。
私も子供が出来て、泳いでいるときに倅の顔が思い浮かびます。無理をしなくなりました。
魚突きをするということは「魚と命を懸け合う行為」と理解するべきと考えています。
魚突きをやってみたいと思っている方は、心構えとして、危険な遊びであることは知っておいていただきたいです。
そして、リスクを把握したうえで始めていただければと思います。
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